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ひとりひとりの主体的な仕事が、地域への貢献・公共交通の維持につながる
- 四国旅客鉄道株式会社(JR四国)
- 2025.02.21
- 香川県高松市他
地域の公共交通は「当たり前にあるもの」だと思っている人が多いのではないだろうか。
少子化・高齢化が進み、利用者が減少する中で、公共交通を維持していくことは、決して簡単なことではない。四国旅客鉄道株式会社(以下、JR四国)は、日本の中でも少子化・高齢化が進む四国において、公共交通を通じ四国地域への大きな貢献を果たしながら、地域の公共交通の維持という難題に挑んでいる。今回、JR四国で働く3人の社員の方に、JR四国での業務や、入社の背景、将来のキャリアビジョン等について、話を聞いた。JR四国が、地域貢献・公共交通の維持を実現していく背景には、若い社員も含めたひとりひとりが責任ある仕事や役割を担いながら、何より主体的に業務へ取り組む姿勢があった。
〈インタビュー相手〉
■ 浮森 直紀(うきもり なおき)さん:JR四国 総務部人事課 主席。総合職事務系。岡山県岡山市出身。京都府の大学を卒業後、JR四国に入社。車掌業務、駅業務、本社駅設備担当、本社駅総務担当、役員秘書等の業務に従事し、現在は採用及びダイバーシティ推進等の業務を担当。
■ 堀尾 一樹(ほりお かずき)さん:JR四国 工務部保線課 課員。総合職土木系。愛媛県宇和島市出身。北海道の大学を卒業後、JR四国に入社。四国内各地の保線区での保線業務に従事し、現在は本社保線課にて四国全体の線路の修繕工事の予算管理を担当。
■ 香西 若菜(こうざい わかな)さん:JR四国 運輸部運輸課 主席。総合職運輸系。香川県高松市出身。九州の大学を卒業後、JR四国に入社。車掌業務、運転士業務、車掌業務の研修担当、本社運輸課での輸送支援業務等に従事し、現在は運輸部全体の予算管理を担当。
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(インタビュー中の香西さん(左)・堀尾さん(中)・浮森さん(右))
――JR四国に入社を決めた理由。JR四国の「人」と「環境」。
最初に、浮森さん・堀尾さん・香西さんが、JR四国に入社を決めた背景・理由について、話を聞いた。それぞれ異なる興味関心・専攻がありながら、3人から共通して語られたのは、JR四国の先輩社員から感じた「人」の魅力、成長・挑戦ができるJR四国の「環境」の魅力だった。
浮森:岡山県岡山市出身で、高校まで岡山で過ごしました。京都の大学に進学し、元々旅行が好きで、公共交通を利用する機会も多かったので、地理学を専攻し公共交通について研究しました。地方都市に於ける公共交通の維持・利用促進の難しさ等についての論文を書きましたね。就職活動では、世の中のいわゆる“普通”として、結婚して子どもを持つというステップを踏みながら働き続けることを念頭に置いていました。働く場所については、漠然と都会への憧れもあったんですが、実際の生活を考えると、地元である岡山や地方で働く方が良いかなと考えていましたね。様々な業種の説明会に足を運びましたが、最終的には好きなことを仕事にしたいと考えて、鉄道会社・航空会社・バス会社の公共交通の企業を志望しました。旅行も好きですが、趣味として楽しみたいと思い、専攻した地理学の知識も活かせる交通分野に絞りました。また、就職活動の中で、多くの会社は総合職として全国転勤が続き、家族も転居や転校を余儀なくされ、負担が大きいと感じました。JR四国は転勤の範囲も四国内が中心で、総合職だと高松での勤務が長いケースが多く、地方の家賃が安くて可処分所得が大きいことも魅力でしたね。
1番大きな決め手だったのが、若手社員の方が自身の業務に精通しているのはもちろん、会社全体のことをとても理解していると感じ、「この人たちと働きたい」と思えたことです。入社してみて分かったことですが、若いうちから責任ある業務に中心的な役割として携われる環境が整っているからだと思います。鶏口牛後という言葉があるように、自分で考え、主体的に行動して、活躍できる環境が良いと考えていました。JR四国の社員の方が、他社と比較しても、主体的な行動や信念を持っていると感じ、それが私にとって1番大切なことでしたね。
堀尾:愛媛県宇和島市出身で、海のすぐ近くで育ちました。小学校・中学校は地元の学校に通い、高校は宇和島市内の高校へ進学しました。海が好きだったこともあり、水産系の学問を学べる北海道の大学に進学し、修士まで進み、北海道で6年間過ごしました。就職活動では、都会は苦手なので、北海道と四国に絞り、最終的には親元に近い四国で働きたいと考えました。生まれ育った宇和島が温暖な気候なので、北海道の冬がどうしても苦手で、育った環境に近い場所で暮らしたいという想いもありました。また、業務としては、大学の研究は海の水温や塩分の測定・データ解析等を行っていましたが、四国では仕事として直接活かすことが難しいことや、研究職があまり向いていないと感じて、新しいチャレンジを志しました。高校時代にJRの予讃線で通学していて身近だったこと、四国全体の交通インフラを支える仕事に憧れを抱いたことから、JR四国を志望しました。また、自分がやりたいことを深く考えていくと、目に見える・形に残る仕事がしたいという想いに気づきました。最初は事務系も考えていましたが、保線の業務は線路を直したり駅をつくったり、自分の仕事が形に残る点に魅力を感じました。水産学部で知識が足りない中で保線の業務ができるか、採用担当や保線課長とも話をして、「そういった方も多くいるから大丈夫」と背中を押してもらえ、挑戦を決めました。自分にもできると感じられ、成長できる環境があるとイメージできたのは大きかったですね。全く異なる分野に進むことになるので、本当に働き続けられる環境か、周囲からのサポートや社内のコミュニケーションが取れるか、特に大切にしていました。JR四国の方々は、密なコミュニケーションをとってくれ、その印象も素敵で、いっしょに働きたいと感じられたことが大きな決め手でした。
香西:香川県高松市出身で、九州の大学に進学しました。実家の最寄りにはJRの路線がなく、利用する機会はほとんどありませんでしたが、九州に引っ越してから鉄道を利用して九州各地を旅行するようになったことが、JRに興味を持つきっかけだったと思います。単なる移動手段だけではない観光列車や、運営する駅ビルが地域の拠点として機能し人が集まる様子等を見て、地域の経済やビジネスへの貢献も感じました。高校生の頃まで抱いていた鉄道会社のイメージが、地域で新しい分野に事業を広げているポジティブなものに変わり、新しいことへの挑戦ができる可能性・期待を抱き、就職活動では鉄道会社を中心に志望しました。また、長く働ける会社、地元で働きながら子育ても両立しやすい環境、福利厚生等も見ていましたね。
私は大学では教育学部で学んでいたので、教員免許を取得して学校の教員になるのが最初に思い描いたキャリアでした。ただ、学ぶうちに教員には向いていないと感じ、民間企業への就職を考えるようになりました。JRの先輩社員との面談で、「今のJR四国は女性活躍がまだ進んでいないけど、これからは女性活躍を応援したいし、期待したい」という話をされたことが印象に残ったんです。自分が挑戦する価値のある会社だと、前向きな気持ちになれました。文系だったので、工務や保線のような技術系の仕事は難しいと考え、事務系の仕事は他の会社と同様の業務を担うのではと考え、鉄道会社でしかできない運輸の業務を志望しました。新しい分野へ挑戦したいと伝えたときも、先輩社員の方々から「全然大丈夫だよ」「女性でも問題なく挑戦できるよ」とポジティブな言葉を最も受けたのが、JR四国でした。自分の挑戦を後押ししてくれる環境が整っていると感じられたことが、JR四国を選んだ大きな理由です。
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(浮森さん(左)・香西さん(中)・堀尾さん(右)|本社社屋前)
――JR四国での業務。業務を通じて感じられるやりがいや地域への貢献。
JR四国の中には様々な業務が存在する。事務系の浮森さん、土木系の堀尾さん、運輸系の香西さん、それぞれの業務について話を聞いた。職種に関わらず、若いうちから重要な業務を任される環境があり、業務を通じて感じられるやりがいや地域への貢献が3人の原動力になっている。
浮森:私は入社して10年目で、総合職の採用です。総合職はやはり現場を知らなければいけないと思います。最初は徳島運転所に配属され、車掌として徳島から高松や鳴門などの4線を担当し、続いて阿波池田に移動して駅業務を担当しました。その後、本社営業部に異動し、駅の設備投資・物品管理を担当し、次に駅の総務担当を務めました。入社6年目に会長秘書になったのですが、役員秘書を6年目で任される会社ってあまりないと思うんですよね。この経験を通じて、広い視野を持って仕事に取り組む大切さを学べました。昨年に人事課に異動し、現在は採用担当として、新卒・中途・外国人材の採用や障害者雇用、ダイバーシティの推進や信賞必罰等を担当しています。チームは4人で、前述の業務を担当するのが私で、新卒・中途採用に特化した担当が1人、高校卒採用と社員教育・研修の担当が1人、全体を束ねる係長(副長)が1人です。ひとりひとりが異なる役割を担っていて、我々だけで業務を進めることが難しい場合は、他の部署のサポート等を受けながら進めています。
入社前から、若いうちから責任ある仕事を任せられる環境だと感じて入社しましたが、その通りの環境だと感じています。現在担当する採用業務も、前任者のやり方をそのまま引き継ぐだけなら私の脳はいらないと言いますか。そうではなく、「もっとこうした方が良くなる」と考える、考えるだけなら他の会社もそうだと思いますが、それを実行に移させてくれることが大きなやりがいになっています。またこの業界は絶対的な安全が求められるので、前例主義や保守的な姿勢がある面も事実です。ただ、最近は長期経営ビジョンの中でも、新しいチャレンジを評価する文化が生まれてきており、変えるべきものは変え、守るべきものは守るという、ある意味正しい考え方になってきていると感じています。
最も印象に残っている仕事は、2018年の西日本豪雨のときですね。予讃線の本山駅と観音寺駅の間にある橋梁の橋脚が傾き、その区間の列車の運行が1ヶ月半ぐらいできなくなってしまったんです。代行バスを運行することになり、その対応をしました。特急列車の代行バスは多度津・観音寺間で、普通列車の代行バスは本山・観音寺間で運行したんですが、25台以上のバスを用意して、特急列車が到着する度に5~8台程のバスを出発させました。この経験で、鉄道の意義を強く実感しましたね。鉄道がいかに1度に多くのお客様を運べるかということもそうですし、それが止まったとしてもお客様は移動が必要でお越しになる。公共交通が地域を支えていると強く実感した出来事です。
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(お話を伺った浮森さん)
堀尾:私は2020年度入社で、最初は高知保線区に配属され、線路の検査や修繕計画を立てる業務を担当しました。次に徳島保線区に異動し、工事の設計・発注を担当しました。更に松山保線区でも同じ業務を担当しましたが、松山は管轄する路線が広く、業務量も多くなりました。今年から本社の保線課に異動し、四国全体の修繕工事の予算管理を担当しています。毎月の工事の決算状況に基づき、予算を調整・管理しています。その他、駅の構内改良のプロジェクトの管理現場への指示や本社内での調整、また踏切担当として踏切事故の対応や安全対策の計画、踏切の拡幅等の工事の話があれば自治体や道路管理者と共有する業務も担当しています。
保線の業務は、計画的に進める部分と臨機応変な対応が求められる部分があります。現場の業務では、線路の歪みや異常を検査し、その結果に応じて決められた期日内に補修や工事を行います。一方、レールやマクラギといった材料に関しては、毎年の検査結果を基に次年度の工事計画を立て、材料の交換等を予算に組み込んで進めます。工事の全体量は年初におおよそ決まるので、保線区ごとに予算を調整し、月毎に管理しながら進めていきます。検査は、線路の歪みの検査は年4回、材料の検査は年1回行います。列車が運行中で昼間の検査が難しい場合は、最終列車の運行後に夜間作業として実施することもありますね。現場の体制は、高松・徳島・松山・高知の4つの保線区があり、それぞれの保線区に池田や大洲等の駐在所があり、保線区で19人~26人程で検査や工事発注、非常時の警備や災害対応等を行っています。四国各地を異動する中で、それぞれの地域の個性を再発見できましたね。
入社前は、保線業務はマニュアルに沿って作業を進める保守業務がメインになるのかなと思っていました。しかし、入社してみると、もちろんマニュアルや専門書はありますが、現場での判断が難しいことが多い業務だと痛感しています。例えば、線路が片側だけ沈んだ異常があったとして、なぜ沈んでいるのか。材料が悪いのか、周辺環境が悪いのか、複合的な要因を見極めるためには広い視野が必要です。鉄道の業務は「経験工学」とも言われるんですが、実際その通り経験が非常に重要な職種だと感じています。また、列車の運行に直接関わる設備を日々補修するのが基本的な業務ですが、自然災害が起こった際などは、現場で列車を運転しても安全かどうかを判断し、運輸や電気といった各系統と連携しながら、早期復旧に向けて一致団結して対応にあたります。そういうときは、自分たちの仕事が少しでも早く安全にお客様を乗せられることに直結していると実感できて、とてもやりがいを感じます。
印象に残っている業務は、3年目に徳島で線路を補修する計画に携わったことで、通常は大型の補修機械を使って数ミリ調整するのですが、このときは線路を200ミリ程大きくずらす必要があったんです。こうした大きな移動はなかなか行われないもので、現場はカーブが多いですし、移動に伴って線路の曲率などの線形の調整も必要で、かなり大変なものでした。3年目の私が計画を担当することになり、プレッシャーも感じつつ、様々な方に相談しながら施工計画を作成しました。施工する際は、60歳を超えるようなベテランの方々に自分の計画を伝えて作業を進めてもらうのですが、そこで現場のコミュニケーションを学べたと思います。現場では周囲の環境に合わせ、例えば線路を移動させるために砕石を掘る等、計画を現場に落とし込むための準備や段取りを含めて大変なところがたくさんありましたね。
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(お話を伺った堀尾さん)
香西:私は2018年入社で、最初の1年目は高知で車掌業務を担当し、2年目から3年目にかけて同じく高知で運転士として勤務しました。この時は高知にはまだ女性の乗務員がおらず、車掌・運転士の女性第一号として配属されました。配属のときに話した女性活躍が、ここで回収されたと思いましたね。今まで男性しかいなかった職場だったので、休憩室を改善してもらえたり、働きやすい環境づくりのための意見を求められたり、良いタイミングで配属してもらえたなと思います。その後、研修センターに異動し、車掌養成や新入社員の研修を半年程担当しました。続けて、運輸課に異動し、輸送支援の業務を担当しました。列車への指令業務や、ダイヤが乱れてしまったときに列車の接続や編成を変える対応等を担当しました。一昨年担当が変わり、現在は運輸部全体の予算管理を担当しています。チームとしては3人で、私が予算管理や総務的な業務を担当し、給与や手当の担当が1人、上司である副長は現場を含めた運輸部全体の総務関係を管理しています。それぞれが全く異なる業務を担当していて、自分の担当の仕事を責任持ってしっかり進めて報告しないといけないですね。
運輸関係の仕事、特に乗務員や指令業務はどうしても女性が少ない現状があります。志望する方はいますが、働き続けることが簡単ではない状況ですね。例えば、乗務員の場合は泊まりの勤務が多くなり、子育てをしながら続けることは難しい部分がありますし、家族の理解も必要になります。もちろん対策は練っていて、朝出勤して夜帰宅できる勤務体系を取り入れる等の環境整備は進めていますが、列車の運行体系上、泊まり勤務が避けられないケースがあり、もう一歩踏み込んだ対策が必要かなと感じています。他社の女性の乗務員の活躍の事例を見ると、制度や環境の整備が進んでいるので、当社もまだ発展途上ではありますが、働き続けられる環境を目指していると感じています。一方で、指令業務も含め、大変なイメージを持たれていることも多いので、私自身の経験も伝えつつ、そうしたイメージも払拭できればと考えています。女性が働く姿を見せ、良い印象を広げることで、やってみたいと思えるきっかけになれればと思います。
印象に残っているのは、高知での乗務員時代の出来事ですね。「志国土佐 時代の夜明けのものがたり」という観光列車がデビューするタイミングで、上司に「いつかあの列車を運転してみたい」と冗談半分で話していたんです。実際に運転するには5年ぐらい運転技術を磨く必要があると知っていたんですが、異動が決まったときに、ベテラン運転士といっしょに運転する機会をいただけて。大学時代には一利用者として乗ったことがあるような観光列車を、自分が運転することになり、運転中は沿線で笑顔で手を振ってくれる地域の方々の姿が見え、JRが鉄道を介して地域とつながっている実感を持てた出来事でした。また異動する際にも、「女性一人目としてきてくれて良かった」と言ってもらえて、本社に異動しても糧や励みになっています。指令に異動してからはまた違ったやりがいがあります。指令業務は、無線を介して現場とやり取りしますが、連絡が来るのは大体良いことではなくトラブルが発生したときです。無線でのやり取りは、簡潔にまとめて情報を得る必要があり、どの情報の優先度が高いか判断し、トラブルを迅速に解決できたときは、とても安心しますね。予算管理の仕事は、今までお金に関わる業務経験がなかったため、日々勉強しながらですね。様々な担当者と調整しながら円滑に業務を進められたときは達成感があります。
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(お話を伺った香西さん)
――日々暮らす環境としての四国や高松に感じること
業務環境に続き、日々の生活環境としての四国や高松に感じていることについても、話を聞いた。
浮森:四国の生活環境は、京都との比較で、まず感じたのは家賃の安さですね。また物価も安いと思います。必要なものが揃っていて、食事もおいしく、海や山の自然も身近にあり、不満はないのが率直なところです。強いて挙げるなら、海外へのアクセスはあるかもしれませんね。関西国際空港に行くのが一苦労なので。日常生活という意味では非常に住みやすいと感じています。また、高松を拠点に働けるというのは大きな魅力だと思いますね。実際、当社の社員の多くが若いうちから持ち家やマンションを購入できていますし、子どもが成長していく中で、転勤が少なく、子どもに「地元」を持たせることができるのはとても大きいと感じています。
堀尾:生活環境は、まず北海道と比べて気候が温暖で暮らしやすいですね。保線区の各現場が県庁所在地にあり、駐在所も西条や池田等の街中にあるので、お店も充実していて生活に困ることはありませんでした。ただ、北海道と比べて面積が小さいので、どこに転勤しても大丈夫だろうと思っていたんですが、実際に四国内を移動すると思ったより時間がかかりますね。保線業務にも本社と現場の行き来はありますが、総合職として最終的に本社で働くことを考えると香川を拠点にできるのは良い点だと思います。
香西:私は元々高松の出身なので、不便さを感じることはほとんどありませんね。自然災害も少ないですし、とても住みやすいと思います。大学時代に住んでいた佐賀県も香川に割と似ていて、地元っぽいところに好感を持っていました。
浮森:都会に出て行きたい人と、地元に住みたい人と、両極端になっていると感じますね。だからこそ、四国の良さを私たちは伝えていかないといけないなと思います。私が四国の外から来て、車掌として現場で働いていたときに感じたのは、四国ではお客様と会社の距離が近いですね。月並みな言い方になりますが、人が温かくて、それはあまり都会にはないものだと思います。
香西:現場もそうですし、職場でも周囲の人が気にかけてくれることが多くて、土地柄・人の温かさを感じることは多いです。
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(JR四国本社近くより撮影した、高松駅のプラットフォーム近くの様子)
――JR四国で描く将来のキャリアビジョン、これから目指す大きな挑戦。
最後に、浮森さん・堀尾さん・香西さんに、これからのJR四国で描くキャリアビジョンについて、話を聞いた。それぞれの経験を踏まえ、これから目指したい新しい挑戦を思い描いている。またその問いの前段として、それぞれの職種での経験を踏まえ、主体性が求められるJR四国の環境を活かせる人はどういう人かという視点でも、話を聞いた。
浮森:JR四国では、先ほどからお話ししているように、若いうちから主体的に活躍することがどの採用系統であっても求められるので、自分の考えや意見を持ち、間違いがあれば「これは違うんじゃないか」と提案できるアグレッシブさがある方の方が活躍できると思います。ただ、駅業務や乗務員の仕事では、決められた安全を追求することが重要で、ルールを守って、丁寧に手落ちなく遂行できることもまた活躍できる要素だと思います。
堀尾:保線業務は、現場仕事という特性上、まずは体が強い人の方が合っているかなと思います。その上で、コミュニケーション能力が重要だと感じますね。現場では、若手とベテランの間で技術の断層があって、その技術を継承してもらう側として、積極的に吸収する意欲が大事だと思います。また、JRの他社と比べて、JR四国の特殊なところとして、補修用機械を直轄で操作して線路を直しています。JRの他社はこの業務は外注化されているので、機械を触ることが好きな方も、保線関係の業務なら何でもできる当社は合っていると思います。
香西:言いたいことを言える人、同僚にも上司にも自分の意見をぶつけられる人の方が合っていると思います。私の場合、指令業務で女性用の施設の整備は進んでいたんですが、最初はまだ女性用のトイレがなく、上司に何度も提案し、設置してもらえました。甘んじて受け入れるだけではなく、良くするために声をあげることが大切です。また、浮森さんの話とも重なりますが、100点を目指す仕事か100点以上を目指す仕事か、この会社の中でも向いている業務は変わると思います。運転士のような業務は決められた規則を守り、安全第一で遂行することが求められるので100点を目指す人に合っていると思いますし、本社の業務は前例にとらわれず、もっと良いことをやろうと100点以上を目指して主体的に動ける人が合っていると思います。
浮森:私自身のこれからのキャリアビジョンついては、任された業務を、いかにより良くするかが自分の役割だと思っています。6年目に経験した秘書の業務も、最初は全く想定していなかったんですが、実施にやってみると、これほどやりがいがあって学びの多い仕事はなかったと思っていて。JR四国は小さな会社ではあるんですが、本当にいろいろな事業、いろいろな業務があり、その中で与えられた仕事に対して全力を尽くし、香西さんの言葉を借りれば「100点以上を目指す」姿勢で取り組むことが私にとってこれからの挑戦であり、やりたいことです。また、私の世代は、担当レベルの最年長くらいになりつつある中で、かっこいい先輩でありたいというのもひとつの目標です。私がJR四国を選んだときの先輩方もそうなんですが、今度は自分があんな先輩になりたいと思ってもらえる存在になりたいと思っています。また当社には若い世代が多いので、若い世代が困っているときに「浮森さん、ちょっと相談に乗って」と声をかけてもらえるような存在になりたいですね。
また、これは会社としても言っていることで、私が大学で学んだ、公共交通をいかに守り、維持していくかという考えにも近いものなのですが、現在弊社では公共交通の四国モデルという取り組みを進めています。公共交通も競争の時代から、協調の時代へという考え方で、例えば列車の運行時間を分かりやすく揃えるパターンダイヤ、JRの定期券で並行するバスにも乗れるモーダルミックス、チケットレス乗車券やアプリ推進等、そのような取り組みをさらにブラッシュアップして、四国の公共交通をしっかりと守り抜いていきたいと考えています。大学で学んだこともありますし、JR四国に入社した理由にもつながっているので、会社の掲げているものでもあると同時に私自身の目標でもあります。
堀尾:キャリアビジョンとしては、これまでの保線業務では、現場で検査といった基本的な作業からスタートし、現在は保線課で統括する立場の業務をしていて、次はおそらく現場の助役になってチームで業務を遂行するための指示を出す役割になって、少しずつ保線業務の権限が大きくなっていくようなキャリアステップになると思っています。一歩ずつステップアップしたいと思っていて、一歩ずつ経験を重ねるごとに視野を広げて、四国全体の線路を見渡せるような広い目を持って仕事をしていきたいと思っています。その中で、自分の技術力をさらに高めつつ、将来的には保線業務で培った知識や経験を活かして、会社の運営や方向性を決めるような仕事にも携わってみたいと考えています。それこそ30年・40年先の話になると思いますが、最終的にはそういう仕事ができたらと思っています。
保線業務での社会的な側面で言うと、輸送障害を起こさないよう、しっかりと設備を維持していくこと、特に人口減少が進む中でどうすれば効率的に維持し続けられるかを考えていかなければと思います。そういった課題を考えながら、安定輸送を支えるための設備を維持していくことで、地域社会に貢献していくことにつなげていければと思います。
香西:私は、まだ予算管理の仕事に就いて間もないので、まずは目の前に業務にしっかり取り組み、知識を深めながら勉強していきたいと思っています。将来的には、これまで経験してきた乗務員や指令業務の知識を活かして、現場の管理者を目指していきたいと考えています。現在、女性の管理者はまだいない状況ですので、そういった役割に挑戦し、女性が現場でより働きやすくなる環境づくりを進めたいですね。そのためにも、今の業務や指令業務についてもさらに知識経験を深めたいです。予算に関する業務は運輸部で経験のある人が少ないので、最終的には「この分野は香西に任せておけば大丈夫」と信頼されるところまで研鑽していきたいです。運転士や車掌は、今でも女性でずっと続けるのは難しいというイメージが残っていると思いますが、そうじゃないと示せる環境を、将来的には私も主体となってつくっていけたらと思っています。JR四国に興味を持ってくれた女性が、会社の制度等を見て、「ここなら働けそうだ」と思える環境を整えていきたいです。また、将来的には、私自身も家庭と仕事の両立がとても大事になると思っています。仕事に没頭するあまり家庭を疎かにすることになると、自分の理想の働き方からはズレてしまうと思うので、家庭と仕事を両立できる働き方を模索したいと考えています。
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制作:四国経済連合会
取材:一般社団法人四国若者会議
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