高知発、地方のための「人」を核とした事業づくり
- 株式会社SHIFT PLUS
- 2021.12.22
- 高知県高知市他
「地方にワクワクする仕事を増やし社会をより豊かに」
少子高齢化や人口減少が進んでいる地域では、地方の活性化を図るため、さまざまな取り組みが始まっている。地方の活性化を、本気で形にしようとする高知県の企業が、株式会社SHIFT PLUSだ。事業内容は、ソフトウェアの品質保証サービスやカスタマーサポート。「高知という場所に貢献できる事業をつくりたい」、「高知発で地方を活性化する事業をつくりたい」との想いから、4つの柱を基軸として「地方創生事業」を新しく立ち上げた。
1つ目の柱は【人材】
四国の求人メディア「BUNTAN」の運営や、県外の学生と高知の企業をオンラインによるマッチングをする事業を手掛ける。
2つ目の柱は【教育】
「土佐まるごとビジネスアカデミー(土佐MBA)」や「高知デジタルカレッジ」の運営を手掛ける。
3つ目の柱は【移住】
「高知家IT・コンテンツネットワーク(KIC)」高知県外で働くIT関連の人材の移住・就職支援を手掛ける。
4つ目の柱は【場所】
シェアオフィス関連事業を手掛ける。「BASE CAMP IN KOCHI」「HARETOKE」
以上、4つの柱の全ての事業の根幹にあるのは、事業づくりの核として「人」を何よりも大切にする、というSHIFT PLUSの想いだ。
今回は、4つの柱のうち2つの柱である【人材】や【教育】の事業を主に、担当する黒岩さんと山谷さんに話を聞いた。
〈インタビュー相手〉
■ 黒岩 洋一(くろいわ よういち)さん:コーポレート管理部で地方創生グループの一員。当初はソフトウェアの品質保証のサービスやカスタマーサポートの業務を担当し、後に県外の学生と高知県の企業のマッチング事業を手掛ける。
■ 山谷 一世(やまや いっせい)さん:コーポレート管理部で地方創生グループの一員。求人メディア「BUNTAN」の運営や、人材紹介事業を手掛ける。
――東京に20年間住んで、生まれた心境の変化は「地元に貢献する仕事がしたい」
高知県出身の黒岩さんは、大学進学を機に上京。20年程東京で勤めた後、高知にUターンし、SHIFT PLUSにジョインした。当初は高知に戻ることなど考えていなかったという黒岩さんは、東京で生活する中で、少しずつ心境に変化が生まれたという。
黒岩:高知で高校まで過ごし、大学進学で東京に出ました。卒業後、就職するのに、高知に戻るとしたら行政機関や銀行といった選択肢しか無いだろうなと漠然と思っていたので、高知には戻ることはしませんでした。高知には素晴らしい企業がたくさんあることを当時は知ることもありませんでした。
エンターテイメント業界には関心があったため、テレビのアシスタントディレクターの仕事から広告代理店の営業、ゲーム会社向けのアートデザインの営業やアートディレクターとしても働きました。大変な労働環境の会社もあったんですが、「人を楽しませるための仕掛けができる人間になりたい」という想いをお客様に伝えたことで、お客様が喜んだり楽しんだりしてくれたことが、仕事のやりがいとなりました。
長年、東京に住んだことで、少しずつ心境に変化が生まれてきたんです。将来どうなっていくのか、今後活躍していけるかどうか不安になっている最中に、盆や正月の休みに高知に帰省した際、高校時代に馴染みのあった商店街の店舗のシャッターが閉まっていたりして、徐々に街に元気がなくなってきていることを見ていく中で、「生まれ育った高知のために動くことが、今までよりもっと仕事にやりがいが持てるのでは」と感じるようになり、Uターンを決めました。
県内での転職活動をする中で、高知県が若者の県内就職を推進するためにサテライトオフィスや支社・子会社を高知に設立するIT企業が増えていることを知りました。
そういった企業や県庁の社会人採用枠についても検討しましたが、東京で培ったコネクションやゲーム業界にいた経験が活かすことができて、高知の抱えている課題解決のために、ITで新たな事業を開拓しようとする姿勢のあるSHIFT PLUSに惹かれ、入社しました。40歳前後での転職は、「ここが最後」くらいの気持ちで入るので、やりがいを重視しました。高知のために活躍できる会社、これまでのキャリアやスキルを活かせる仕事が良いなと思いました。
東京で転職した時も、自分が好きでいられる仕事を第一に考えていたので、その点は同じですね。
入社後は、担当する業務が高知への還元になっていることへの実感が、仕事へのやりがいに繋がっています。東京との違いも感じますね。高知県民にはあるあるかも知れませんが、コミュニケーションを大事にし、他人の懐に入って仲良くなるのが上手く、東京より早く濃い関係をつくることができる風土があると感じています。東京より和気藹々として過ごしやすいですね。
UターンやIターン者はとけ込みやすく、業務で成果を発揮しやすい環境かなと思います。
――高知が抱える課題に立ち向かい、新たな事業をつくることで高知の現状を変えたい
東京出身の山谷さんは、大学卒業と同時に高知にIターンし、地元の不動産会社に就職。
東京と高知のギャップを感じつつ、高知に移住したからこそ高知が持つ地域課題に目を向けることができ、SHIFT PLUSでその解決に取り組んでいる。
山谷:東京の大学を卒業と同時に、高知出身の妻と一緒に高知に移住したんです。不動産企業に勤め、仲介業務や新しい法人営業部署の設立、新規事業等に取り組みました。6年程勤め、SHIFT PLUSに転職しました。
今考えるとよく移住したなと思うのですが、そのまま東京で暮らすことが普通だとは思いつつ、それが正解とも思わなかったですし、東京はある程度楽しみ尽くした感じもあり、地方で暮らす生活もありかなと、あまり深く考えず移住しました。
高知では妻の親族等、人との関わりが深く、核家族で育った自分は家族のあり方の価値観がいい意味で変わりました。お金を稼いで消費する人生というよりは、人との関係を深くして人生を濃くするという価値観に変化していきました。
また、地方に移住したらのんびり生活できるという印象もあったのですが、逆に課題が多かったり、所得の差もあったり、のんびりはできない感覚ですね。仕事の選択肢が少なく、マーケットが小さいため、働き始めてからむしろ地方でのビジネスの難しさや課題を強く感じました。
前職の不動産業界は当時まだまだアナログで、転職する少し前頃から不動産テックが話題になりつつあったんです。伸びているデジタル産業で、プロダクトをつくる側としてキャリアを築きたいと思い、転職を考え始めました。
ITの技術を持たない自分が応募できる求人は多くなかったのですが、SHIFT PLUSの新規事業の求人に強く惹かれました。
転職では、まず自分が成長できる環境かどうかを軸に考えていました。また、子どもができたタイミングで、「次世代に残るおもしろい仕事をつくること」を自分の人生のミッションにしていたので、それが実現できる環境かどうかも重視していました。
自分一人のことだけを考えれば、都市圏に戻るキャリアもありますが、「高知から人口が流出していて、仕事がないから若者が戻ってこない」という実際に住んだことで体感した高知の課題に対し、自身が事業をつくることで高知の現状を変えたいという想いが強くありました。
実際にジョインすると、変化の激しいIT企業というこもありスピード感が違いますね。また、Iターン者も多く、マインドセットやスキルの差も感じました。
中途採用で集まったメンバーが大半なので、それぞれが強みを持っています。一人メンバーが変わると、がらりとチーム全体が変わったり、強みを持った人が集まることによるシナジーが生まれ、新しい事業に繋がる面白さを感じています。
――事業づくりの核として、大切にしているのは「人」
異なる背景を持ちジョインした山谷さんと黒岩さんが担う「地方創生事業」。事業づくりで大切にしていることを聞いた。
黒岩:SHIFT PLUSのコーポレートビジョンが、「地方にワクワクする仕事を増やし、社会をより豊かに」です。
高知県は課題先進県と言われるくらい少子高齢化や人口減少等、全国的にみても課題が山積しています。SHIFT PLUSは高知で新しいサービスや仕事を生み出し、首都圏と同等の対価を得て社員に還元する。また、首都圏に行かずとも働ける場所を提供するという形で、高知の経済発展に寄与したいと考えています。
若い社員を雇用し、新しい事業をつくり、給与に還元していたのですが、「県内の他企業にも波及させたい」、「高知の魅力的な企業の存在を若い人に知ってもらい、UIターンにつなげ、高知という場所の活力を生みたい」という想いが芽生えてきたんです。
山谷:高知県はIT企業の誘致や立地に力を入れていて、SHIFT PLUSはその初期に、高知に本社を置く企業として設立されました。メインの事業である品質保証やカスタマーサポートは、主に大都市圏のクライアントから案件をいただいております。
順調に事業が伸びる中、せっかく高知に根付いた会社なのだから高知発の事業をつくろうということになりました。高知でやる意義として、新しい事業をつくり、雇用を生み出し、高知の人々にさらに還元していきたいという想いからでした。
地方創生事業の成り立ちとしては、まず高知や四国にどのような企業・仕事があり、そこでどんな人が働いているのかを知れるWebサイトがなかったことです。
そこで企業や求人の情報よりも、どんな人がどんな想いで働いているのか、企業の中が分かるような「BUNTAN」という求人メディアをつくりました。
「人材」を柱とする事業と併せて、首都圏のIT関連人材との関係人口を創出するコミュニティ事業の運営を高知県と開始しました。イベント等を通じて高知のIT系の求人の状況を伝え、関係人口を増やしながら、移住やUIターンを目指す「移住」を柱とする事業です。
さらに、県内でIT人材を育成し、県内の企業に繋げるため、「教育」を柱とする事業を高知県より委託を受け一緒に取り組んでいます。そして高知に想いを持つ人が集う「場所」を柱とする事業につながります。
中心にあるのは「人」です。高知が好き、高知をどうにかしたい、高知に移住したい、高知に帰りたい、という想いを持つ人にフォーカスし、ITやデジタルで支える事業が地方創生事業の4つの柱として形になっていると思います。
担当するBUNTANで大切にしているのも、企業の「人」を伝えることですね。求職者が求める情報は、企業や求人の情報だけでなく、働く人がどういう人か、どういう想いを持って働いているのか、どういうライフスタイルを形づくっているかだと思うんです。人は会社と働くわけではなく、会社という場所で人と働くのだと思うので、求職者の目線を考え、若手社員の方を主にインタビューで取り上げています。
その想いから、単なる求人サイトではなく求人メディアと呼んでいて、実際に記事を見て相談される求職者様は企業のファンになって応募いただけるので、マッチングの確率が高いんです。知らなかった仕事や企業の情報を知っていただく、そこで人に新しい生き方や仕事との出会いをつくれることが一番のやりがいになっていますね。
黒岩:担当する県外学生と高知の企業のマッチング事業では、私もそうでしたが、やはり高知の企業を知らないことが大きな課題だと感じています。学生目線で運営するために、大学生にも運営スタッフとして企画から入ってもらい、企業紹介も大学生が企業を取材し、学生から行っています。企業からも学生からも好評で、当事者の目線で考え、声を拾うことが大切だと感じています。
山谷:企業や自治体とは、お金を支払う/受け取るという関係を越えて、一緒にビジネスをするパートナーとしての目線や立ち位置を大切にしたいと思っています。当事者意識を持って、相手の課題解決や成長を真に促すことを大切にしたいです。
――高知から、全国の地方の課題解決ができるビジネスを生み出す
最後に、「地方創生事業」のこれからについて聞いた。高知に軸足を置きながら、より広い視野で、より広範な地域の課題解決を図る、高知発全国型のビジネス構築を目指しているSHIFT PLUSのビジョンが垣間見えた。
黒岩:高知が課題先進県ということもあり、高知で成功モデルをつくっていきたいです。高知で実現できれば他県にも応用が効くはずで、地方創生に取り組むビジネスモデルをSHIFT PLUSが先駆けてやっていきたいというのが目指すところですね。地方の課題と向き合う仕事に、大好きな高知で高知のために取り組めることは、大きなモチベーションになっています。
山谷:BUNTANを特別なメディアにしていきたいという想いと、黒岩も言うように高知の課題がこれから全国の、ひいては世界の課題になっていくような、地方でも通用するビジネスモデルを提供できるプラットフォームをつくりたいと考えています。高知から日本全国に通用するビジネスを創出できれば、SHIFT PLUSも注目されますし、そこで働きたいという人たちにとって、ひいては高知の雇用にも繋がっていくものと思います。
黒岩:首都圏と同じようになりたいわけではなく、自然や人とのつながりの良さを保ちつつ、発展を目指せればと思っています。地方には地方の、首都圏には首都圏の良さがあって、お互いの良さ、デメリットを埋め合うような形を目指したいですね。関係人口として、地方に関わる人を増やしていくことが大事だと思います。首都圏で働く人でも、関わりたいと思ったときに地方に関われることが地方創生に繋がるのかなと思います。
山谷:地方に人口を大きく流入させて経済を成長させることが地方創生なのかというと、それは違うと思うんですよね。サスティナブルで、持続性を持って生産性の高い経済活動、ライフスタイルをつくることが地方創生につながると思います。
黒岩:これからSHIFT PLUSで一緒に働く人を想像すると、まだ若い会社で、どんどん新しい事業が生まれるので、自らキャッチアップできる人や考えを発信できる人が向いていると思いますね。言われたことだけやる、という方は難しいかなと思います。
山谷:自分はこうしたい、こうありたい、こういうものをつくりたい、という想いがある人が合っていると思います。民間企業として成長性も求められ、同時にコアとなる想いや意欲がないと行動が生まれないと思うので「高知で絶対に新しい事業をつくりたい」というような強い想いを持つ方、そこに具体的なビジョンがあればなお良いと思いますね。
黒岩:まだはっきりとした形は描けていないのですが、将来的には、企業の成長を持続的に支えるビジネスをつくりたいと考えています。
我々が行っている事業もそうですし、行政の施策もまだまだ点と点。「採用」にしても「教育」にしても、すべては企業の経営戦略・事業戦略に紐づくものです。県内企業の皆様が課題に向き合い一緒に解決できるパートナーとして、高知県の経済発展に微力ながらでもお役に立ちたい、そういった基盤となる事業ができればと思っています。例えば県内外の事業者と接点を持てるシェアオフィスやワーキングスペースのようなスポットに大学生を巻き込んで、高知のキーマンたちと採用や新規事業の話をしたり、同じ職種同士でナレッジをシェアしたり。
交流がビジネスへ波及し、事業が生まれ、人も育つ、その中心にSHIFT PLUSがあるというのが、これから目指すところです。
その時には高知だけではなく全国規模で、地方で働くことの楽しさ、地方のライフスタイルを伝えるプラットフォームをつくれればと思っています。そのプラットフォームが各地方の情報を集約できるものになればなあと思いますね。
山谷:私は、企業の採用課題を解決できるサービスをつくりたいと考えています。理想的な採用とは、自社だけで人がたくさん集まる状態のことだと思います。
デジタルを掛け算することで地場企業に人が集まるような仕組みづくりがしたいです。
●株式会社SHIFT PLUSの採用ホームページはこちら
制作:四国経済連合会
取材:一般社団法人四国若者会議
四国へ就職・転職し、